インプラントは歯を失ったときに本物の歯のような見た目と機能を取り戻せる注目の技術です。しかし、インプラント自体は人工物ですので、天然歯とは勝手が違う部分もあります。また、インプラントは従来の歯の補綴技術である入れ歯やブリッジとはまったく異なる技術ですので、まだあまり知られていない情報もあるのが現状です。
ここでは、インプラントの欠点についてご説明します。よくご理解いただいた上で、インプラント治療を選択するかどうかの判断材料としていただければと思います。
外科手術である
インプラント治療では外科手術を伴い、通常の歯科医療より踏み込んだ治療を行うことになります。当然、手術には万全を期しますが、歯や顎以外にも、頭部の他の器官、全身にも影響の出る合併症、感染症といった危険がゼロではないことをご認識ください。
また、インプラント以外の外科手術全般にいえることですが、疾患をお持ちの方には治療が行えないことがあります。治療を行えない例として、糖尿病・肝炎・心臓病・喘息・高血圧などがあげられ、妊娠中の方も安定期以外での治療は危険とされています。
治療期間が長い
インプラント（人工歯根）が顎の骨に結合するまでは、少なくとも6週間は必要です。また、顎の骨の状態によってはさらに3ヶ月程度待たなくてはならなかったり、インプラントの埋入以前に顎の骨を強化する治療が必要になったりすることも。インプラントは、入れ歯やブリッジと比べてとても長い治療期間を必要とするのです。
全額自己負担
インプラント治療に保険は適用されませんので、治療費は全額自己負担です。他の治療は保険適用範囲内で行えるものもありますが、インプラントに関しては最初から最後まで治療は自費で行うことになります。
金属アレルギー
人工歯根の素材はチタンを主としており、一般的に生体親和性が高いといわれています。現在の臨床では安全といわれていますが、チタンも金属です。人によっては金属アレルギーを引き起こす可能性はゼロではありませんので、ご注意ください。
治療が複雑
歯のみならず、顎の骨や周辺神経まで考慮した治療を行いますので、治療内容が複雑になります。診断と治療計画、治療を、通常の歯科治療よりも綿密かつ正確に行う必要があります。外科手術を伴うため、特に衛生面には十分な配慮が必要とされます。
隣の歯を失ったときにインプラントしか選べない
インプラントを施した箇所の隣の歯を失った場合、治療の選択肢はインプラントしかありません。それは、インプラント自体が部分入れ歯やブリッジの支えとなるだけの力を持たないため。インプラント治療を繰り返すことのないよう、治療後にはご自身の歯のメンテナンスもより入念に行う必要があります。
歯根膜がないことでのリスクがある
天然の歯の根に存在する「歯根膜」が、インプラントにはありません。歯根膜には触覚、痛覚、温覚、圧覚などの感覚があり、咬む力を制御する役割も担っています。そのため、歯根膜のないインプラントでは咬む力が加減できず、他の歯や周囲の組織を傷めるといったトラブルがよくあるのです。また血液供給される歯根膜がないため、インプラント周辺の細菌感染に対する抵抗力も弱くなります。インプラント周囲炎の注意が必要なのはこのためです。
インプラント治療を行うと、歯根膜がないために強く咬んでしまう傾向があります。また、咬む力が強かったり、歯ぎしりや咬みしめの癖があったりすると、人工物であるインプラントが咬み合う歯や周辺組織を傷つけることがあります。そういった場合には、マウスピースの活用が有効です。
インプラント治療時には、咬み合わせに配慮してなるべく他の歯や歯周組織と干渉しないように人工歯を装着しますが、加齢などに伴うお口の変化によっては何らかのトラブルが発生する可能性があります。睡眠時など、マウスピースを用いて咬み合わせのバランスを整えることで、そうしたトラブルを予防することができます。
以上のように、インプラント治療には他の治療以上に気を付けなければならないことがたくさんあります。しかし、これらのデメリットを上回るメリットがあることも事実です。適切なメンテナンスが継続できれば、インプラントほど心強い補綴技術はありません。インプラントを治療の選択肢のひとつとお考えであれば、ぜひ他の治療法である入れ歯やブリッジとも比較してみてください。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で選択されることをおすすめします。
